「1990年ごろから、アトピー性皮膚炎で外来を受診する乳幼児に、食物アレルギーを有しているケースが大変多くなりました」と語るのは、小児科の医師・柴田瑠美子(しばたるみこ)先生。なかでも乳幼児の食物アレルギーでは、正しい知識と理解のもと、家族全員で向き合うことが大切です。

柴田先生の著書は、25年にわたって開催されている「食物アレルギー教室」の講義をわかりやすくまとめた1冊。限られた診察時間では十分に指導することが難しい「食物アレルギーから子どもを守る!」知識やノウハウが詰まっています。

柴田先生の「食物アレルギー教室」シリーズ2回目は、症状の出方や発症のメカニズムで異なる「食物アレルギーのタイプ」について。それぞれのタイプの特徴を正しく理解して、安全に食物アレルギーを乗り切っていきましょう。


原因となる食べ物を摂取してすぐに症状が起きる【即時型食物アレルギー】

即時型食物アレルギー

●発症年齢:新生児期・乳児期
成人まで年齢を問わず発症するが、最も多いのは0~1歳。年齢が上がるとともに治っていくことが多い。

●おもなアレルゲン 鶏卵・牛乳・小麦・そばなど〈症状の例〉食べた後にすぐ以下のような症状が現れる
・顔や体にぽつぽつとじんましんが出た。
・口の周囲やのどに、腫れた感じ、かゆみなど違和感がある。
・咳が出てきて、全身が赤くなって息が苦しくなった。

●アナフィラキシーショックの可能性 ++

アレルゲン食物を食べた直後から2時間以内に、皮膚、粘膜、呼吸器、消化管などにアレルギー症状が出るものをいいます。じんましん[皮膚]と咳込み[呼吸器]、あるいは、嘔吐[消化器]とじんましん[皮膚]など、2つ以上の臓器症状が出た場合を[アナフィラキシー]といい、重症化のサインとして認識しておく必要があります。強いアレルギー症状から[アナフィラキシーショック]を起こし、血圧低下、意識障害などに陥り、死に至ることもあります。

 

原因となる食べ物は、乳幼児では鶏卵が最も多く、牛乳、小麦の3つで9割を占めます。また、魚類やピーナッツ、そばも発症の原因に。学童期から成人では、食生活の幅が広がるため、原因食物の種類は多岐にわたり、えびやかになどの甲殻類、果物などの食物アレルギーも報告されています。
 

生後3ヵ月頃までに発症[食物アレルギーの関与する乳児アトピー性皮膚炎]

食物アレルギーの関与する乳児アトピー性皮膚炎

●発症年齢:乳児期
アトピー性皮膚炎の症状がみられる乳児に食物アレルギーを合併している場合がある。多くは寛解。

●おもなアレルゲン 鶏卵・牛乳・小麦・大豆など〈症状の例〉・生後3ヵ月頃から湿疹が出始め、顔や体に広がっていく。かゆみが強く、眠りが浅くなることから機嫌が悪くなることも。
・アトピー性皮膚炎といわれ、ステロイド軟膏などの薬をつけてもなかなか治らず、むしろ悪化する傾向にある。

●アナフィラキシーショックの可能性 +

生後3〜4ヵ月ごろより、顔、体に湿疹を繰り返す場合は[乳児アトピー性皮膚炎]と診断され、食物アレルギーと合併していることがあります。アトピー性皮膚炎は、かゆみのある湿疹が主な症状です。湿疹は、顔や頭、首、口、耳の周囲、手足の関節の内側にできやすく、よくなったり悪くなったりをくり返すのも特徴。また、このタイプでは、アレルゲンとなる食物の接種後、かなり遅れて翌日などに湿疹の悪化がみられます。

原因となる食べ物は、鶏卵、牛乳、小麦が大半。食物アレルゲンの摂取によって、皮膚のかゆみが強くなり、皮膚を掻くことにより湿疹が悪化するという悪循環に陥りがちです。このタイプでは、適切な外用薬治療とスキンケアが必須。また、重症なケースほど、多種の食物アレルゲンに陽性を示す傾向があります。とくに、牛乳、鶏卵、小麦、魚では、摂取後すぐに症状が現れる[即時型症状]が誘発される割合が高くなります。

 

粉ミルクを飲むと下痢や嘔吐が起こる[新生児・乳児消化管アレルギー]

新生児・乳児消化管アレルギー

●発症年齢:新生児期・乳児期
主に粉ミルクに含まれる牛乳のたんぱく質によっておこる。多くは寛解。

●おもなアレルゲン 牛乳(乳児用粉乳)〈症状の例〉
・症状が出るのは粉ミルクを飲んで24時間以内と比較的ゆっくり現れる。まれに母乳を与えている場合にもおこる。
・授乳後2時間以降に、下痢や血便、嘔吐、腹部膨満などの症状が現れる。

●アナフィラキシーショックの可能性 +

おもに、粉ミルクに含まれるたんぱく質によって起こるアレルギーで、新生児から乳児にみられる疾患です。症状が現れるのは比較的ゆっくり、ミルクを与えて2時間以降、24時間以内に、急に激しい嘔吐が起こり、場合によっては嘔吐のためにぐったりすることがあります。まれに母乳を与えていても症状が出ることが。このような症状があったら、アレルギーを専門とする小児科医の指導が不可欠です。
[新生児・乳児消化管アレルギー]では、医師の指示により、アレルギー用ミルクを用います。また、離乳期に大豆やお米などが原因でなることも。いずれも、乳児期までに治ることが多いようですが、「食物たんぱく性胃腸炎」とも呼ばれ、まれに幼児期以降に発症することもあります。


幼児期から成人期に発症する[特殊型食物アレルギー]

特殊型①[食物依存性運動誘発アナフィラキシー]

●発症年齢:学童期~成人期
特定の食べ物を食べてから数時間以内に運動をすると症状が現れる。症状が出たら迅速な対応が必須。寛解しにくい。

●おもなアレルゲン 小麦・えび・かになど〈症状の例〉
・全身のじんましんやむくみ、せき込み、呼吸困難など。
・進行が早く、約半数は血圧が低下して重度の症状(アナフィラキシーショック)を起こす。

●アナフィラキシーショックの可能性 +++

[特殊型食物アレルギー]は、発症年齢と症状によって2つに分類されます。[食物依存性運動誘発アナフィラキシー]は、おもに学童期以降にみられるアレルギーで、食後30分から2時間以内の運動中にアナフィラキシーという強い症状が現れるものです。アレルゲンとなる特定の食べ物を食べただけでは症状は起きず、食後に運動をすると症状が出るのが特徴。小学校入学後、昼食後の運動中に初めて起こることがあります。

中にはアレルギーが耐性化して治ったはずの食物アレルゲン(小麦、牛乳など)によって起こることも。これは、運動によって食物アレルゲンの吸収が高まるためで、食物アレルギーの特殊なタイプです。1万2000人に1人と割合は少ないものの、治癒しにくいとされています。

特殊型②[口腔アレルギー症候群]

●発症年齢:幼児期~成人期
特定の植物の花粉と関連があるとみられ、花粉アレルギーのある人に多くみうけられる。寛解しにくい。

●おもなアレルゲン 果物・野菜など〈症状の例〉
・生の果物や野菜、大豆(主に豆乳)などを食べたあとに、唇や口の中、のど、耳の奥などにかゆみや腫れ、痛みなどを感じる。
・加熱すれば症状は起きにくいといわれるが、果物アレルギーでは加熱してもアナフィラキシーを起こす場合もある。

●アナフィラキシーショックの可能性 ±

[特殊型食物アレルギー]のもう1つは、乳幼児から成人期と幅広い年齢層で発症する人が最近急上昇している[口腔アレルギー症候群]。食物アレルゲンと直接反応していなくても起こる食物アレルギーです。たとえば、花粉症を発症している場合、果物や野菜の食物アレルギーを発症することがあります。これは、天然ゴムや花粉など食物以外の物質とある種の果物や野菜に共通の「たんぱく」があるため。花粉によってIgE抗体ができるとき、この共通の「たんぱく」にも反応して食物アレルギーが起こるようになるのです。

おもなものは、ラテックス(天然ゴム)と果物、花粉と果物・野菜という組み合わせです。後者の場合、生の果物を食べると、即時に口の中(口腔内)に症状が出るため、[口腔アレルギー症候群]と呼ばれています。症状は比較的軽い場合が多いのですが、アナフィラキシーを起こすこともあるので要注意。専門医療機関を必ず受診してください。

また、食品に含まれる有毒な細菌やウィルス、化学物質による食中毒でも、食物アレルギーに似た症状を起こすことがあります。食べ物が原因でなんらかの症状が出ても、自己判断は禁物。次回は、食物アレルギーの診断の手順についてレポートします。


柴田 瑠美子(しばた・るみこ)
医学博士。日本アレルギー学会指導医。国立病院機構福岡病院小児科非常勤医師。中村学園大学栄養科学部客員教授。 昭和46年九州大学医学部卒。九州大学医学部講師、国立病院機構福岡病院小児科医長を経て現職。早くから食物アレルギーの専門医として研究、治療に積極的に取り組む。平成2年より同病院にて食物アレルギーの親と子のための「食物アレルギー教室」を開催。食物アレルギーの理解を深める抗議や除去食の指導などで患者の家族の不安に寄り添い、多くの食物アレルギー児の寛解、耐性化をサポート。『食物アレルギー診療ガイドライン2005、2012』、『食物アレルギーによるアナフィラキシー学校対応マニュアル』に政策委員として関わる。著書(共著)に『ホップ・ステップ!食物アレルギー教室』(南江堂)など。

 


著者 柴田 瑠美子 講談社刊 1200円(税抜)


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食物アレルギーでは初期対応が重要です。食物アレルギーと診断されたら、正しい知識のもと、お子さんの食物アレルギーを把握し、ご家族全員で向き合うことが大切です。
この本では、食物アレルギーのタイプ、アレルゲン食物の特徴、診断方法、治療、日常生活での注意点など、知っていただきたいポイントと長年の臨床で培ったノウハウをまとめています。

のほか、料理、美容・健康、ファッション情報など講談社くらしの本からの記事はこちらからも読むことができます。

イラスト/伊藤ハムスター

出典元:

・第1回「医師が教える意外と知らない食物アレルギーの基本の知識」はこちら>>