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50歳で見つけた自撮りヌードの道 〜熟女がありのままの女性性を肯定する方法〜

最近、SNSをにぎわせている、マキエマキさんという女性をご存知ですか? 彼女の職業は、主に風景や建物などを撮影するフォトグラファー。ですが、話題を呼んでいる理由は、そのお仕事とは少し異なります。注目を集めているのは、もうひとつの顔である「自撮り熟女」としての活動。

その作品は、大胆なヌードがメインでありながら、昭和の時代を彷彿させるエロさと笑いの絶妙なバランスで、多くの女性ファンをも魅了しているのです。

自撮りを始めたきっかけは、意外にもご自身の閉経だったそう。女性であれば、多かれ少なかれ誰もが味わう、女性性がこぼれ落ちていくような焦燥感。その経験を越え、いまや女性としての魅力をポジティブに表現されているマキエさんは、一体、自らの女性性とどのように向き合ってきたのでしょうか −−−。

歯に衣着せないおしゃべりも楽しい、マキエマキさん。取材中も笑いが絶えなかったのは、マキエさんの旺盛なサービス精神の表れだったに違いありません。


自撮りのきっかけは
飲み屋ですすめられた
コスプレだった


−−− スカッと爽快感のあるマキエさんの自撮りヌードが大好きで、今日はお会いできるのを楽しみにしておりました。早速ですが、そもそも自撮りを始められた理由から教えていただけますか?

マキエ:きっかけは、行きつけの飲み屋で開かれた「セーラー服を着て飲もう」というイベントでした(笑)。Amazonでセーラー服を買って、それを着て撮った写真をSNSにアップしたら、予想外に反響があって。「おもしろい!」というコメントも多かったのですが、「足がキレイ」とか「かわいい」とか褒めてくれる人もいて、単純に嬉しかったんですね。35歳を過ぎてから、そんな風に女性として褒め言葉をもらうことなんて、ほとんどありませんでしたから。

マキエさんの自撮りヌードの魅力は、その大胆さとなりきりっぷり! ここでは少々おとなしめの写真を選ばせていただきましたが、より大胆な写真に勇気をいただきたい場合は、現在開催中の個展に伺ってみてはいかがでしょうか。

−−− 更年期〜閉経までの間は、ご自身の女性性についてどのように捉えていらっしゃいましたか?

マキエ:生理周期が変わり始めるあたりから、手のひらから女性性がこぼれ落ちていくような感覚を持つようになりました。何かを失っていく寂しさは誰にでもあると思いますが、私の場合は、なす術もなく、こぼれ落ちていく女性性をただ黙って見ている感じ。だからこそ、あえて女性の部分を意識しないようにしてみたり。「どうせなくなるんだから」という諦めが強かったので、その頃の方が自分のことをオバサンだと思っていたかもしれません。服装や外見にもあまり気を遣っていませんでしたしね。

ただ、いまにして思えば、そんな自分に変化をもたらした出来事があって。2012年にコスメブランドの主催で、ミス・ユニバース・ジャパンのナショナル・ディレクターだったイネス・リグロンが、素人女性を美しく変身させるというイベントがあったんです。モデルに応募したら、選ばれて変身させてもらえることになったのですが、イネスが変身前の私を見て「まるで少年みたい」だと。私は、若い頃にモデルをしていたこともあり、容姿にまったく自信がないわけではなかったのですが、そんな風に言われて軽くショックを受けました。

それが46歳の時。これは、なんとかしなきゃいけないのかなと。だからといってバリバリ女を頑張ろうとはならなかったのですが、いま思えば、あの一件も自撮りを始めたことに繋がっていた気がします。

−−− 女性性を見ないようにしながらも、モデルに応募されたんですね。

マキエ:やっぱり、心の底では揺れていたんでしょうね。

−−− そして、そんな気持ちの揺らぎもありながら、冒頭の、セーラー服を着て褒められたという出来事が起き、そこで心境の変化が訪れた…。

マキエ:まさに、寝た子を起こされた感じでした。50歳を間近にしてセーラー服を着たら、色々な人から褒めてもらえたわけです。自分ではよく“図に乗った”という言い方をしているのですが(笑)、それは本当に大きな転機だったと思います。


セーラー服もホタテビキニも
笑ってもらえたら本望!


−−− セーラー服で自撮りを始めて、次に撮ったのがホタテビキニだそうですね(笑)。 いきなり露出度が高くなりましたが、なぜそこに飛んだのでしょうか?

こちらが噂のホタテビキニ。インスピレーションソースはもちろん、ミモレ世代なら誰もがご存知の武田久美子さんです(笑)。武田さんの写真集を撮影されたフォトグラファーの渡辺達生氏ご本人からもお墨付きをいただいているとか。


マキエ:私としては、そこにギャップはないんですよ。すでにセーラー服で何かを飛び越えていたので(笑)。それと、あれは“ヌード”じゃなくて“ホタテビキニ”なんです。やってみたかったアホなことという意味で、セーラー服もホタテビキニも同列。だから別に恥ずかしさはなくて、きっと腹が出ていようが、乳が垂れていようがやっていたと思います。

−−− なるほど(笑)。そしてそこからは、現在のピンク映画のような作風になっていくんですね。なぜ、そういう表現を選ばれたのですか?

マキエ:とにかく笑えるおもしろいことがしたかったんです。セーラー服を着て、ホタテビキニを着て、その後は新潟にあるドカベンの銅像前でケツバットの写真を撮りました。でも、次がなかなか思いつかなくて。もともとB級ピンク映画のビジュアルが好きだったので、そういうイメージの自撮りは少しずつ撮っていたのですが、もう少しきちんとしたカタチにしたいと考えていた矢先、ある展示会で、モデルを使ってピンク映画のポスターのような写真を撮っている作品を見掛けたんです。で…、まあパクリなんですけど、これをやったら面白いかなと。だから、正直な話、そこはパクリですね(笑)。

−−− とにかく、笑いを追求したくて辿り着いたんですね(笑)。

マキエ:そうですね、これを自撮りでやったらきっと笑えるだろうと。でも、アイデア的にはパクリですが、タイトルや絵づらは絶対に真似しないようにと思ってやってきました。いまでは資料もたくさん見つけましたし、アイデアがこんこんと湧いてくるようになりました。

−−− マキエさんの作品には潔さがありますよね。ヌードになる恥ずかしさはありませんでしたか?

マキエ:ないですね。自撮りしている時って、脳内がふなっしーになっているんです。「マキエマキ」という着ぐるみを着ているというか。だから、恥ずかしいとか、そういう意識はないんですよ。


「勇気をもらえる」という声が
さらなるモチベーションに

 

−−− ご自身の名前や作品が世の中に広まっていくなか、女性性が認められていくような感覚はありますか?

マキエ:うーん、そういう感じはないですね。もともとセーラー服の自撮りを思いついたのもそうですが、単におもしろいことをしたいという気持ちなので。ただ、私の作品は女性が見に来てくださることも多くて、「勇気をもらえた」「元気になった」と前向きな感想をもらえるのはすごくうれしいんです。そんなコメントをいただけるって、なんて幸せなことだろうと、そこはいつも噛み締めていますね。

“自撮り”とは言え、ひと目でわかる完成度の高さは、さすがフォトグラファー。ハジけた写真の裏側にはプロとしてのこだわりが。そんなところもまた魅力です。そしてマキエさんの撮影に欠かせないのが旦那さまの存在…。詳しくは、インタビュー後編をご覧ください!

−−− 男性よりも、女性に向けて作品づくりをしているのでしょうか?

マキエ:そうですね、男性のためにというのはまったくないかもなあ。あくまで、自分のなかのエロスや性欲、女性性を表現しているつもりなので。

−−− ところで、筆者が初めてマキエさんの自撮りヌードを拝見したのは、今年の3月にあった『東京女子エロ画祭』という、女性目線のエロアートのコンペティションでしたが、個人的な感想として、マキエさんの作品は他のノミネート作品と比べて異彩を放っているように感じました。

ひとつは、マキエさん以外の作者さんは、みなさん年齢的にお若そうでしたよね。そしてもうひとつ興味深かったのは、にも関わらず、マキエさん以外の作品からは、あまり男性の気配を感じなかったことです。女性のなかで想像して完結しているエロと言いますか…。あくまで私の感じたことですが。マキエさんの作風と50代という年齢に、相互関係はあると思われますか?

マキエ:そうですね…。私は、女性って本来、好きでもない男性から性欲を向けられると傷つくものだと思うんです。そして若い女性は、そういう傷がまだ生々しい状態で生きているんじゃないでしょうか。だからこそ、どこか「男の人なんて!」という意識が働くのかもしれません。

でも、私の場合はなんかもう、そういう傷が乾ききっちゃってますからね(笑)。だからむしろ男の人に対して「これで欲情しちゃうんでしょ〜。ホレホレ」みたいにできてしまう感じはありますね。それはたぶん、傷を受けている最中は難しいことなんですよ。自分を守ろうとする時は、傷つけてくる相手を排除しようとするのが普通だと思いますから。たとえば、電車で痴漢をされて「ハイどうぞ」って差し出す女性はいませんけど、私のやっていることは、「はいよっ!」ってパンツ脱いでいるのと同じですからね。

−−− なるほど〜、むしろ男性は引きそうですね(笑)! でも、セクシャルなことに対するそういった態度は、歳を重ねた女性の魅力にも繋がっていくのかもしれません。マキエさんの作品を観た女性たちが、「勇気をもらえた」と感じるのはなぜだと思いますか?

マキエ:女性って、もう25歳を過ぎたくらいから、若さを失うのが怖くなっていくじゃないですか。振り返ると自分もそうでしたし、男性が若い女性を賛美する風潮もあるから、“若さを失う=女を失う”という感覚は歳ごとにどんどん増していく気がします。そしてそれは、人によっては自分のアイデンティティが壊れてしまうくらい怖いものかもしれません。でも、私の自撮りヌードを見たら「50歳オーバーでもこれができるなら、自分もまだまだイケるんじゃない?」と、そんな風に感じてもらえるんじゃないですかね(笑)。

実は、何を隠そうマキエさんは、本コンテンツ「オトナのための性教育」を立ち上げるきっかけともなった方。筆者がマキエさんの作品を拝見した感想をSNSにアップしたところ、それを見た大森編集長が「彼女にインタビューしてみたい」と連絡をくれたことがすべての始まりだったのです。


文中にも登場した『第5回 東京女子エロ画祭』では、グランプリとニコ生賞のW受賞を獲得されていたマキエさん。以来、SNSのフォロワーは急増し、個展もたびたび開催されるなど、目下躍進中の50代です。そして、実はマキエさんの作品には、旦那さまも協力されているという驚きの事実が。インタビュー後編では、そんなご夫婦のエピソードや、マキエさんが考えるミモレ世代の性欲との向き合い方についてもお伺いしていきます。どうぞお楽しみに!

マキエマキさんに興味を持たれたみなさんに、朗報です! マキエさんは現在、個展「ホテルニューマキエ 〜マキエクリスマス〜」を開催中。昭和ムード満点のラブホテルで撮りおろした独特の世界観に出会えば、自分の性との向き合い方に新たなヒントをもらえるかもしれません。ぜひ足を運んでみてください!

「ホテルニューマキエ 〜マキエクリスマス〜」会期:〜12/24(月)15時〜23時(火・水曜定休)
場所:カフェ百日紅(※入場無料、要オーダー)

マキエマキ

52歳。自撮り熟女。本業は官公庁等の撮影も行う堅実派のフォトグラファーだが、49歳でいきつけの飲み屋のコスプレイベントに参加し、セーラー服の自撮り写真をSNSにアップしたことから自撮り人生がスタート。昭和のムードが漂う、大胆でユーモアのある自撮りヌードを撮り続ける。2018年3月に開催された「第5回 東京女子エロ画祭」では、作品「自撮りカレンダー熟女」にてグランプリとニコ生賞をW受賞。以来、ネットニュースにも頻繁に取り上げられるなど話題の人に。SNSや個展を通じてファンを増やし続けている。 ツイッター:makiemaki50 インスタグラム:makieakaban フェイスブック:jidorijyukujyo


撮影/浜村達也
取材・文/村上治子
構成/片岡千晶(編集部)

 

 

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