「オープンリーゲイ」の歌人として活躍する鈴掛真(ずずかけ・しん)さん。新刊の中では、「ゲイからノンケになることはあるの?」や「偽装結婚の実態」について、ゲイの立場から率直に回答しています。LGBTが身近な世の中へ、知っておくべきことを短期連載で掲載いたします。

鈴掛真(すずかけ・しん) 歌人。1986年愛知県生まれ。名古屋学芸大学メディア造形学部卒業。短歌結社「短歌人」所属。第17回 髙瀨賞受賞。広告会社でコピーライターとして3年の勤務の後、作家として本格的に活動をはじめる。「短歌のスタンダード化」「ポップスとしての短歌」をセオリーに、ブログ・Twitterなどで作品を随時発表中。著書に(大和出版)がある。

 

 

ゲイからノンケになることはあるの?


ゲイの多くは、それまで異性愛者として生活していたのに、ある日を境に自分が同性愛者であることを意識するようになります。
では逆に、ゲイからノンケになってしまうことはあり得るのでしょうか?
 

「僕はゲイでした」は本当か?


まだまだ同性愛への差別や偏見が根強い日本では、ほとんどのゲイがノンケのふりをして生活しています。大半は、家族や職場にばれないように、同性との恋愛関係をコッソリ育んでいるわけですが、中には女性との結婚にまで及ぶゲイも存在します。女性からしてみれば、自分の彼氏や夫がゲイだったとしたら、失神するくらいショックですよね!

古い話になりますが、1998年、オリンピック女子マラソンのメダリスト・有森裕子さんと結婚したアメリカ人男性のガブリエル・ウィルソンさんが、結婚後すぐに「I was gay.(僕はゲイでした)」と発言し、当時大きな話題となりました。「wasってなんだよ、wasって!(笑)」と世界中がツッコんだことでしょう。
有森さん本人はそれを承知で結婚したそうですが、このガブリエルさん、ゲイだったことはさておき、かなりお金にだらしなかったようで、結局2011年に離婚しています。
「I was gay.」と言うように、ゲイって卒業できるのでしょうか?

まず僕が思うのは、「ゲイがノンケになるって矛盾してないか?」ということ。
ノンケとは『同性愛の気(け)が無い』=『non気』が語源。同性愛の気がゼロということ。一度でも「自分はゲイ」と認識したことがある人なら、たとえある日を境に異性しか恋愛対象としなくなったとしても、既に同性愛の気がゼロではないので、バイセクシュアルになることはあってもノンケになることはないですよね。

じゃあ、ゲイがバイセクシュアルになることはあるのかというと、“なる”というより、“そもそもバイセクシュアルなのかゲイなのか”ということが問題です。

僕のように生粋のゲイと自称できる場合もあれば、男女ともに恋愛対象とできるバイセクシュアルや、男女ともにセックスはできるけど恋愛対象は女性だけのバイセクシュアルなど、セクシュアリティには様々なタイプがあります。ある時期までは同性とばかり恋愛してきたけど、魅力的な女性に出会って「この人と結婚したい!」と思うようになるバイセクシュアルの男性がいても、不思議ではないと思います。ガブリエル・ウィルソンさんの「I was gay.」にも、そういった意味が込められていたのではないでしょうか。
 

本当にあった! ゲイによる偽装結婚の実態


有森さんのように、夫がゲイ“だった”と知っていて結婚するならまだしも、世の女性たちが避けたいのは、知らないうちに自分がゲイの偽装結婚の相手にされることだと思います。
僕はかつて、実際に女性と偽装結婚したゲイにインタビューしたことがあります。
彼は、某大手広告企業に勤める35歳。年上の奥さんと、1歳になる娘と、一見仲むつまじく幸せに暮らしています。しかし、これまで奥さんとのセックスは、娘をもうけた時のたった一度だけなんだとか。1回でできたのも凄いけど。
「男とセックスしたくならないの?」と尋ねると「めっちゃしたい(笑)」と照れていました。いやいや、照れられても!
「今でも男とセックスしてるの?」と踏み込んでみると「それはどうかな」とごまかされました。やってんな、コイツ。
「俺がゲイだって、奥さんも勘づいてるんじゃないかな」と言っていましたが、旦那が人知れず男と浮気しているのを黙認していると思うと、奥さんが不憫でなりません……。

ゲイが偽装結婚に及ぶ理由、それは他でもなく『世間体』です。
今も昔も、結婚して家族を養っていることが、男性としてなによりのステータス。社会的信頼が付き、大企業では出世に大きく関わってくることもあるでしょう。また、由緒正しいお家に生まれれば、個人の意志に反して結婚を強要されることも。
これはなにも、ゲイに限ったことではありません。むしろ世の既婚男性に、女性と結婚した理由を尋ねたら、『世間体』を挙げる人は多いんじゃないかな。案外、「世間体さえ気にしなければ、結婚なんかしないで、仕事で稼いだお金を全部自分一人に使う人生だったのに……」と後悔している男性もいるのでは?

とはいえ、いくら世間体が大事でも、他人の人生を巻き込む結婚まで利用するのは、いかがなもんでしょう。

アップル社のティム・クック氏は、偽装結婚などせずに、オープンリー・ゲイとしてCEO(最高経営責任者)の地位まで上り詰めました。世間体を取り繕うような人に比べれば、ゲイであることを恥じずに企業で活躍している人の方が、よほど社会的信頼がおけると、僕は思います。

ただ、色眼鏡で見られず、実力で評価されたいと思うゲイの気持ちもよくわかります。ティム・クック氏のようなリーダーがまだ日本に現れていないということは、今の日本では偽装結婚でもしない限り、ゲイが大企業で評価されるのは難しいということなのかもしれません。
世間体も大切ですが、そんなものを気にしなくても良いくらい、誰もが自分らしい人生をまっとうできる社会になることを、僕は心から願っています。

ところで僕は、未婚のアラフォー女性の友達から、「とりあえず子どもがほしいから、真ちゃんの精子ちょうだい!」とよく言われます。「偽装でもいいから結婚したい!」という女性は、世間体を気にしているゲイを狙うのも良いかもしれませんよ。ここだけの話ね。

 

鈴掛 真 著 1500円(税別) 講談社

すぐそばにある「LGBT」が身近になる世の中へ、の入門書!

「カミングアウトは必要じゃない。だけど、隠す必要だってないでしょ?」最近よくきく「LGBT」だけど、まだまだ知らない人が多い。
Q.何人に1人がゲイなの?--A.100人のうち3人と言われてます!
Q.いつゲイだって自覚したの?--A.幼稚園にあがる頃!
Q.同性愛って趣味なんでしょ?--A.それは大きな間違い!
Q.アウティングってなに?--A.セクシャリティに関して本人の意思に反して他人が勝手に暴露すること。
Q.腐女子ってどう思う?--A.いいと思うけど……
「知らない」より「知ってる」ほうが、きっといい――そんなソボクな疑問に「オープンリーゲイ」の歌人として活躍する鈴掛真が答えます!

鈴掛真さんをお招きして
バタやんのインスタ読書会、ライブ配信決定!


聞いてみたいけど誰にも聞けなかったあんなことやこんなこと。興味本位なことから、身近な誰かを不用意に傷つけないために知っておきたいことなど……。こんなにまっすぐに、丁寧に、例えを交えながら言葉を尽くして語ってくれる人はなかなかいないと、鈴掛さんの本を読んでいたく感動した川端。鈴掛さんご本人がインスタ読書会にゲスト出演してくださることになりました!いろいろと直接お話を伺ってみたいと思います。
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