美味しい食べ物にお値ごろファッション、可愛いアイドルと極楽エステ――その全部が揃った韓国・ソウルは、何度でも行きたくなる旅行先。でもたまには「いつもと違うソウル」も見てみたーい!ということで、編集部・バタやんと、私、ライター・渥美志保の「オチビさん二人組取材班」は一路韓国へ。4回目の今回は、今や世界的にも注目の韓国のファッションについて。韓国では次から次へと魅力的なブランドが生まれるのはなんで?――その理由を求めて、オチビさん二人組取材班は東大門へ向かったのでした!
 

●東大門は、なぜファッションのメッカとなったのか?

というわけで、東大門に降り立った私たち。でも向かったのはいわゆる東大門市場ではなく、隣町の昌信洞(チャンシンドン)です。その昔は最高級の石材を採掘する岩山だったというこのあたりは、現在はソウルで売られているたくさんの洋服の縫製を一手に引き受ける職人さんの町。小さな縫製工場が軒を連ねる山の斜面に、今年4月にオープンしたばかりの「」があります。

。「イウムピウム」には「縫いつなぐ」「(花を)咲かせる」の二つを合わせた造語。「人と人を繋ぎ、共感の花を咲かせる」という思いが込められているそうです。

入り口を入ると吹き抜けになった真っ白な展示室があり、その壁一面にはピンクのフレームが可愛く並んでいます。よくみるとこれ、ミシンや糸巻き、針や糸など、洋裁道具の古い広告や包装、そしてお針子さんたちの古い写真のようです。こちらはこの町の縫製業の歴史を記録した博物館です。 

壁一面に飾られたピンクのフレームの中には、洋裁道具の広告や包装が可愛く展示されえています。なんだかどれもかわいいものばかり。
展示室の吹き抜けに下がる衣服たち。ロフト部分には、韓国の縫製業界を支えてきた伝説のマスターたちの展示があります。
1950~70年代に使われていたクラシックなミシンたち。デザインされたロゴや絵が描かれていたり、美しい細工があったり、端正なオブジェのよう。

 

●縫製業の賃金はこの30年ほとんど上がっていない

韓国のファッション産業のルーツは1950年代半ばまでさかのぼります。始まりは、朝鮮戦争休戦後にソウルに残ったアメリカの進駐軍。彼らの軍服などの縫製を請け負ったのが、清渓川沿いに住み着いた戦争の避難民たちです。ひしめき合う彼らの家々はほとんどバラックといっていいもので、「どうぞ火事にならずに平和に過ごせますように」という思いから、ついた名前が「平和市場」。これが今も東大門にある「平和市場」の始まりです。70年代後半には東大門の工場はあらかた姿を消しましたが、チャンシンドンは今も当時のままの縫製業者の密集地域。昔も今も、注文した服を1日で仕上げることが可能とか。そのスピードと技術が、チャンシンドンのすごさなのです。

確かに今思うと「メイド・イン・チャイナ」以前の時代、私が幼い頃なんかは「メイド・イン・コリア」が多かったなーなんて思うんですが、60年代後半から70年代は、まさに縫製業が韓国の基幹産業として「イケイケどんどん」だった時代。日本の明治期の養蚕業と似て、10~20代前半のお針子たちは低賃金と長時間労働が強いられていたようですが、そうした構造は現代においても尾を引いているのだとか。縫製業の賃金はこの30年ほとんど上がっておらず、1着の単価でなんと5000w(約600円)。
「韓国って服が安くて嬉しい!――と素直に喜んでちゃいけない気がしてきますね……」とちょっと反省するバタやんと私です。

元は採石場の岩山だったチャンシンドン。坂道、結構キツイので歩きやすい靴で。



●韓国発の新ブランドが、すぐに世界を目指せる理由

さてそんな手仕事の歴史と韓国人独特の「起業熱」が相まって、できあがっているのが東大門市場かもしれません。ビルの中には個人が営む「一坪店舗」がびっしりと入り、創業から数年で「年商100億ウォン!」なんてブランドになるものも。

ソウル市もそうしたファッション産業が観光の目玉であることを分かっていて、様々なバックアップをしています。そのうちのひとつがDDP(東大門デザインプラザ)を運営するソウルデザイン財団の取り組み。特に力を入れるのは新人デザイナーの育成で、財団が選んだ新人「ジェネレーション・ネクスト」をトレンドショーへ送り込み、そこから選んだ10人を「ソウル・ファッション・ウィーク」へ、そこからさらに2人を選び海外のファッションショーへ送り込み……というシステムができているんだとか。

ドラマをご覧にならない人には恐縮ですが、「なんなのその『宮廷女官 チャングムの誓い』顔負けの“競い合い”は!」と私は興奮してしまいました。シビアな競争社会を潜り抜けて世に出る韓国のデザイナーが、個性からマーケティングまで、キレッキレなわけですな……。

DDPでは世界的なハイブランドのエキシビションも行われています。こちらはシャネル。
こちらはディオール。同じ空間を使えることは、多くのデザイナーにとってすごく刺激になりそう。
こちらは取材時に開催されていた「トンデムン・ファッション・フェア」。トンデムンのデザイナーたちをバイヤーとマッチングするイベント。


もうひとつは、ファッション産業に限らずベンチャー企業を支援する「ソウル創業(スタートアップ)ハブ」の存在です。昨年オープンしたこの施設は、創業前のコンサルから創業後のマーケティング、支援金の拠出、パートナー企業とのマッチングや、グローバル進出の支援などを行ってくれる場所。さらに起業7年目までのベンチャーで審査に通れば、オフィスも無料提供まで!恐ろしいほどの太っ腹に「え、タダ?タダですか?ソウル市民なら?」とやや興奮のバタやん、起業する予定があるのでしょうか。気になります。(残念がら権利はソウル市在住者に限られるそうです)。

ソウル創業ハブ。現在150の新規事業者が入居中。そのほか、コワーキングスペースなどもあり。

そんなこんなで、いまや世界中でイケイケどんどんなソウルのファッション業界。注目のブランドをいくつかご紹介しましょう。

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

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創業8年にして、NY、LA、ロンドン、シンガポールなどを含めて海外で11店舗を展開するアイウェアのブランド「GENTLE MONSTER」。元会社員の社長は、創業当時は「海外ブランドのようなデザインを廉価で!」というスタイルを目指したそうですが鳴かず飛ばず。「デザインがダサい」という友人の言葉に衝撃を受け、徹底したマーケティングで今のスタイルに行き着いたのだとか。芸能人が使うようになり、人気女優チョン・ジヒョンがドラマ『星から来たあなた』で使ったことで、売り上げは4倍近くになったそう。

話題を呼んだのは、斬新すぎるそのショールーム。ショールームなのに目立つところに商品はなく、コンセプチュアルな美術館のような。その実態を知りたい人は、カロスキル、弘大、北村などにある旗艦店へぜひ行ってみてくださいね~。


 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

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「履くと5kg痩せて見える!」というコンセプトの、名前もそのまんま「-5kgジーンズ」。なんて韓国らしい分かりやすさ!とつい笑っちゃうけれど、とはいえ誰もが捨て置けないネーミングですよね。これがアジア全土で大ヒットしたことで、ブランドの知名度をぐんと上げたのが、2012年設立のカジュアルブランド「CHUU」。
特に日本では専属モデルのテリが大ブレイクし、その人気を牽引中。「この子の顔、これがほんとに素なの?SNOWじゃないの?」と言いたくなる、信じられないほどかわいいドール顔で、今や日本のティーン雑誌の表紙も飾っています。
ソウルでは弘大にフラッグシップ店舗があり、明洞のYOUNG PLAZA内にもショップ展開しています。アパレルブランドですが、聖水洞(ソンスドン)でカフェ「onion」も運営し、こちらも人気です。

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

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モデルやDJとして活躍するイ・ヒョジンは、やYoutubeでも自身のスタイルを発信する人気のファッションアイコンとして知られる人物。「OPEN THE DOOR」は彼女がディレクターを務める人気の通販サイト。値段も手ごろで若い層にすごく人気なのもうなずけます。
小さい頭に長い脚、挑発的な表情で着こなすストリート系ファッションは、パンクでカッコいいんだけれどどこかガーリーな独特のスタイル。いつも違う髪色、違う髪型、違う化粧で違う顔で出てきて、常に独特を醸し出して目が離せないのがすごいところ。


インフルエンサーとオンラインの力を使いながら、スピード感と貪欲さで瞬く間に世界的な注目ブランドへと駆け上がっていく韓国ファッション。韓国国内の市場規模はあまり大きくないので、そもそも海外展開を前提としたビジネスを考えているからかもしれません。
次回は、ファッション同様、世界的な人気を誇るK-POP、韓国ミュージックシーンのこれまでとこれからを掘り下げます。
 

撮影/PENTA PRESS/Seoul Metropolitan Government、
渥美志保、川端里恵(編集部)
取材・文/渥美志保
構成/川端里恵(編集部)

 


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