今どき映画を観る機会は多様で、移動中の飛行機の中、仕事場のPC、寝室に置かれたプロジェクター、出張先のテレビなどなど、私の周りにもたくさんあります。電車の中ではスマホやipadで動画を観ている人も多いですね。

それぞれ便利さを伴っていますが、ここまで挙げた手段は「ながら」になってしまう映画鑑賞法、どれだけ集中力を注いでも周りで起きていることに気が行ってよくないなあと思ったり。映画館で映画を観るのは、時間の制約と出かける手間がかかり手軽ではありませんが、映画から受ける印象までもぐっと違ってきます。なかなか毎週通う訳にもいかないのですが、たまにはじっくり映画を観に映画館に足を運びたいです。

 

家の近くに小さな映画館があります。封切りの映画はかかりませんが、見逃した、気になっていた映画、もう一度観たい好きな映画をかけてくれる私の心強い味方です。なかなか味のある古いシアターで、2本立てのプログラムが一週間で変わり、鑑賞料は2本で1500円、毎回テーマを持ったプログラムが組まれています。駅と映画館前に張り出される上映告知を見ては、さて今回は行く時間を作れるかなと、自分の予定をチェックします。先日まで、私の最も好きな映画の一本、王家衛(ウォン・カー・ウェイ)監督の「ブエノスアイレス」と「花様年華」が二本立てで上映されていたので、(特に「ブエノスアイレス」は私にとって重要な映画なのです。)出張の合間のそのまた隙間を縫って劇場の椅子にはまってきました。

 

大スクリーンから迫り来る映像、良質な音、真っ暗な中で一人画面を見つめると、グイグイ感覚が開かれていきます。集中して観ているのでこれだけ繰り返し見ている映画でも新しい発見があり、90分間映画に寄り添い、ストーリーの目撃者になるのです。登場人物の心の動きを見守りながら探っていると、体が移動しない旅をしているような気持ちになるものです。

 
 

今朝、台北に到着しました。昨日観た「ブエノスアイレス」がまだ身体の端々に余韻を残しています。地球の裏側のブエノスアイレスから香港へ主人公が帰国する途中、トランジットの台北で夜を過ごします。アジアの風に久しぶりに触れた彼は夢から覚めたようだと独白します。
誰かの旅の終わりは、私の旅の途中、そのまた誰かの旅のはじまり…台北の夜長に。