どこの町に行っても、その土地の独特の食べ物には興味惹かれるのですが、その中でも家庭の味には興味津々、地域性とそれぞれの家の個性が重なって、ことさら印象が際立ちます。

先日沖縄の友人を訪ねた時に頂いた一品がなんとも忘れ難かったのです。それは「なかみ汁」。その名の通り、豚モツを丁寧に洗って、さらに洗って、少しの肉と鰹だし、薄めの塩でゆっくり煮込んだ、見事に澄んだお汁です。具はその他に、しいたけとこんにゃく。

工房兼自宅の台所に立つのは友人の陶工、古村其飯さん。お料理も素晴らしいのです。

3日もかけて仕込んでくれたというのですから、なんと有難い料理なのでしょう。まずその見た目がなんとも綺麗、第一印象で意表を突かれます。モツの料理と先に聞いていたので、いつものモツ煮込みのような色の濃いものを想像していたのですが、このお汁はなんともクリア、わずかに白濁していますが、それがかえって塗りのお椀を彩ってとても綺麗。まるで光の差す朝靄のようで、具が透けて見えています。その上、一口汁を口に含むと非常に上品な塩味、あぁ美味い、美味い。確かな旨味が、喉から胃へゆっくりと染み渡り、いやー、効く効く!疲れが吹き飛びます。私の今まで知っていたモツの味は、なんとやんちゃなものだったのでしょう。モツはこんなにもドレスアップできる食材なのですね。

これが最高の「なかみ汁」。こんなに綺麗なのです。

お椀の中で白くひらひらと踊るその姿、まるで羽衣の袖のようではないですか。口の中に落とすとなんと柔らか、極薄く切ったこんにゃくよりも滑らかに感じます。あっぱれ、私の「なかみ」への印象は、こうして180度変わってしまいました。この際「なかみクイーン」とでも呼ばせていただきましょうか、絶品なかみ汁を作ってくれたその友人の話によると、この料理は琉球の宮廷料理だったそうで。当時は中国から料理人を呼んでいた影響で、このようなモツの丁寧かつ端正な調理法を取り入れられたのだろうということでした。さらにこのなかみ汁は、お正月に他の土地で食べるお雑煮にあたるものだそうで、沖縄においてこのお汁は特別なご馳走なのです。

「なかみ汁にこれをちょっと入れてみて。」なかみ汁クイーンに導かれるがまま、沖縄産生胡椒の塩水漬けを刻んだものをぱらりと投げ込むと、これがまたキリッと旨味を引き締めて一層洗練された味に。わっ、凄いぞ沖縄の素材の力!

古村さんの作る南蛮荒焼(なんばんあらやち)の器に泡盛を入れてねかせておくと、それはまろやかな味になるのです。思わず盃がすすみます。

こんなに素晴らしいなかみ汁に寄り添ったのは、これまた地のもの、雲南百薬のむかご炊き込みご飯でした。葉を食べたことがありましたが、むかごは初体験。少し苦みがあって粘りが強いので、炊き込んだご飯に風味が生まれます。もっちりとした食感に思わず笑みがこぼれてしまいます…なんとふくよかな味わいなんでしょう。ご飯の美味しさ、汁物の有難さを刷り込まれた身としては、この日のメニューはこれ以上ないご馳走でした。

大きな台風が去った直後、たくさんの果実が風に打たれて落ちてしまいましたが、これも美味しく変身させてしまいましょう。

香の物として琉球ごぼう、パパイヤのぬか漬けまで登場し、食感のバリエーションも加わって文句無しです。お汁もご飯もおかわり。しっかり2杯ずつ頂いてしまいました、美味しいものを美味しいと感じて食べられることの喜びを噛み締めながら、いろんなことに感謝です。

工房からは神の島と言われる久高島が見えます。