ビューティエディター松本千登世さんの最新刊より、老ける人と年相応にきちんと歳を重ねていく人の違いについてをお届けします。


後ろめたさのない、後ろ半身を意識する


「体」は「心」の状態をよく知っていて、「見えないから」と慢心すると、顕著に緩み、下がります。そのため、大人が特に注意すべきは「下半身」と信じ込んできたけれど、じつは、「後ろ半身」なのじゃないか、最近になって、そう思い始めました。自分では見えづらい、触りづらい、だから、変化に気づきづらい。さらに怖いことに、他人の目には、よく見えている……。意外と後ろ半身で年齢が判断されていると気づいているはずです。気づいたときが始めどき。食事や運動に気を使うのはもちろん、何より手っ取り早いのは、自分の体に触れることなのだと思います。特に、見えないところほど丁寧に。お気に入りのボディケアに出合って、お風呂上がりに、出かける前に、と毎日毎日。小さな習慣で、余計なものを抱え込まない体に、後ろめたさのない体に近づけたい。体から生まれ変わると、心まで生まれ変わります。これこそが、居心地のいい自分へのスパイラル。

 



「そのマスカラ、どこの?」
「その靴、どこの?」 と聞かれたら……


「洋服好きは野暮になる、美容好きはブスになる」。ある男性編集者に言われてどきっとさせられたことがあります。「好き」が行きすぎると、視野が狭まり、自分を見失い、バランスが崩れ、美しさや素敵さから遠のくのだ、と。

「そのマスカラ、どこの?」「その靴、どこの?」と褒められないほうがいい。「今日、なんだかいい感じ」と言われるくらいのほうがいい。纏っている「何か」が目立たないよう全体をなじませる客観性が、気配の美しさを生むのだから。


プロとの対話が生む 一歩先の大人美がある  


今、「買う」という行為から「対話」が消えていると聞きます。ショップに行っても、試着をしないで、ただ見るだけ。試着をしても試着室から出てこないで、自己完結。挙句の果てに、そこでは当たりをつけるだけ、実際には買わないで、同じもの、似たものをネットでもっと安くゲット……。最後まで、スタッフと言葉を交わさないですませる、そんな人が増えているというのです。

へーっ、時代は変わったんだね。ある女性スタイリストを囲み、私たちは大いに盛り上がりました。すると、彼女がひと言。
「一見、おしゃれに見える人は圧倒的に増えたけれど、本当におしゃれな人は少ないんじゃないかな? 対話がないってことは、他人の目、プロの目を生かせないってこと。それでは自らおしゃれに『限界』を作っているようなものだと思うの」  

洋服を着ることは、そう単純じゃないのだと彼女は言いました。同じアイテム選びでも、Sを選ぶかMを選ぶかで印象体重をコントロールできたり、着丈の微差で印象身長をコントロールできたり。袖をぎゅっとたくし上げたり、裾をくるっとロールアップしたりすることで抜け感やこなれ感が生まれることもある。その人のバランスを美しく見せるか否かは、何を選び、何を着るか以上に、どう選ぶか、どう着るかが重要。その答えを導き出すには、対話が、いちばん。対話こそが美しさの進化の源なのに、と言って……。  

確かに。撮影の現場でも、スタイリストはモデルに洋服を徹底的に「アジャスト」します。ウエストの後ろをつまんでみたり、ボタンを開け閉めしてみたり、合わせる靴を変えてみたり……。そうすることで、とびきり格好いい着こなしが生まれるのです。お店のスタッフは、まさに私たちにとってのスタイリスト。対話を楽しむと、選び方や着方が変わって、新しい輝きが放たれる。おしゃれが更新されていくと思うのです。  

化粧品も同じこと。洋服以上に自分に近い存在なのに、聞こえてくるのは「雑誌に掲載されていたから」「友人にいいと聞いたから」という声ばかり。どう選ぶか、どう使うかにはじつはあまり頓着しない人が多いのではないでしょうか。肌に「行き詰まり」を感じているなら、もっとプロと対話をするべき。すると、きっと見えてくると思います。今まで知らなかった肌の真実が、そしてこれからの肌運命が。その先にこそ、新しい美しさが待っているはずなのです。

 

<新刊紹介>

著者  松本 千登世 講談社 1200円(税別)

読むほどに「女」修行!
若さの代わりになにを豊かにするのか?

ビューティジャーナリストとして、様々な女性誌でエッセイの連載を担当するのはもちろん、自身の魅力に迫る特集が組まれるほど。「女性の若さ」が優位されがちな日本で、早くから、歳を重ねて生まれるエレガンスを、それを生み出すテクニック&心持ちをエッセイとして発表してきました。日々の何気ない気づき、習慣、美容タイムから、眠れる”大人美”を育てるためのヒントが満載。

撮影/目黒智子
協力/藤本容子
構成/川端里恵(編集部)


・第1回「「大人磨き」とは、もう一度、未来の自分にわくわくすること」はこちら>>
・第3回「「おしゃれな人」と「おしゃれに見られたい人」の差とは」はこちら>>