最近、器の買い方について考えている。
 

私は、料理の撮影のために、器を揃える仕事を生業としている。
使いやすい器、料理がきまる器を用意したい、と考えたとき、まず自分で使うことが大切!と気が付いてから、食器に関する展示会、特に、作家ものの展示には足を運び、買って、使ってみることにしている。
 

買うとなったら、一点ものでしたら一つですが、銘々で使えそうなものは、6客揃えで買ってしまう。
 

それは、母の実家は11人家族で、食器棚には、同じ器が最低12客ずつ、たっぷりと積み重なっていて、その影響か、母の食器棚も、こまごまと食器が6客ずつは揃っていて、「食器棚とはそういうもの」と無意識に刷り込まれたからかもしれない。
 


ある展示会へ行った時、その「6客買い」を目撃した作家さんに驚かれたことがあった。「今、そんな買い方する人珍しいですよね。料理屋くらいですよ」と。
 

「器を買って使うことは、私の仕事ですから」と、仕事のせいにしてみたものの、その後、その言葉がずっと私の脳裏に残っていて、器の買い方について、今一度考える、良いきっかけとなった。


その作家さん曰く、「同じものを2客買うのがせいぜい」だそう。
私は、それを聞いて、「おや?」と思う。
今やブームも去り気味の「おもてなし」ですが、もてなし!もてなし!ともてはやされていた頃、皆、どんなふうに器を使っていたのかしら??



ある友人宅へ夕飯に招かれた時のこと。
お互いに夫不在の、気ままな妻の会。準備も手伝いながら、彼女の、いつものこなれたごはんに安心感が漂う。
そして、これにはあれ、あれにはこれ、と、食器棚に重ねられた器を2枚ずつ取り出す。
それは、実家から受け継いだものや彼女自身が見つけたもの、どれも、大切そうにしているものだ。
「さあ!食べましょう!」と席に着いた私たちの目の前には、盛り鉢が数種に、汁椀とご飯茶碗、大小銘々皿が3つずつで、テーブルがいっぱいに満たされた。
「私のために、こんなに沢山の器を使ってくださるなんて!」それだけで豊かな気分になった。

彼女は、夫と二人暮し。
(私のように)物を溜め込むタイプでもないですし、台所も食器棚も、いたって普通サイズ。
金銭感覚もいたって普通。
取り立てて、パーティーピーポーというわけでもない。
ですが、彼女の器のラインナップは、十分豊かなのである。


器を揃えで買わない常套句としてよく聞くのが、
・うちにはそんな収納スペースがないから
・器に、そんなにお金をかけられないから
 

ですが、彼女のような例を見ると、その常套句は、言い訳でしかないように感じる。
 

では、なぜ、買わないのか?
それは、自信がないからなのではないか、と思う。
「素敵!」と思って買ってはみたものの、その器を果たして使いこなせるか、自信がないのである。
だから、「とりあえず1客…」、もしくは、「私と夫と2客…」と買うのである。



前述したように、私は、仕事と託けて、かなりの“食器狂い”である。
尋常でない量の食器が、尋常でない大きさの食器棚に詰め込まれている。
日常生活にプラスして仕事を通して、普通の人より少しは多くの“器経験”を積んでいるであろう身として、“自信のないあなた”に、どんなものがあったら良いか、少しは指南できるかもしれない。
が、人には人の生活スタイルがあって、私が提案するものが、他の人にとって正しいとは限らない。
ここでは、自分に合った食器選びができるよう指南したい。
 

1) まずは、今持っている器で、朝・昼・晩と、使う器を変えてみるのは
いかが? 3食完璧である必要はない。
「朝は決まってこれ!」という器があっていい。

2)それができるようになったら、どれか1食だけでも料理に合わせて、日々、器を変えてみてはいかがでしょう?
毎日やる必要はない。少し余裕のある日だけでいい。
特別に気合を入れて料理を作った日だけでもいい。

3)そうすると、少しずつ、自分に合った器や、使用頻度の高い=自分にとって使いやすい器が解ってくる。

4)そうすると、例えば作家さんの展示会などに行ったとき、「これが絶対いいな!」という器が見えるようになる。

5)そうしたら、ちょっと出費ですが、6客(せめて4客!)買う。
なぜなら、最近の作家さんは、展示会ごとに次々と新しいものを制作しているので、後日「あの時の、あの器がほしい」と言っても作れないことがあるから。

6)器を買ったら、しばらく取りやすいところに置いて、意識的に、
使ってみる。
すると、それが自分にとって正解だったか否か、解ってくる。
(不正解だったものは、人にあげてしまいましょう!)


そんなことを繰り返すと、段々と好きなもので食器棚が埋まってくる。
それが、“あなた”の正解なのである。
 

ある程度、時間のかかる作業かもしれない。
自分の食器棚になるまで、多少出費がかさむかもしれない。
ですが、器に流行り廃りはないですから、一生使えると思えば、一時的な出費も安いものである。
そして、食べることとは一生のおつきあいなわけですから、多少の時間がかかっても、今のうちに、自分に合った器のラインナップを見つける甲斐はあるのではないでしょうか?



6客買いについて、まだ疑問を呈するところ??
そうしたら、おうちのテーブルを見てみて。
4人掛けなら、4客で結構。
6人掛けなら、やはり、6客揃えでどうぞ。

◎ 今日の6客買い・・・のプレート
◎ 今日のデザート・・・義母からいただいた黄桃
撮影/白石和弘