少し前のことになりますが、ポルシェの新車発表会で松浦弥太郎さんのお話を聞く機会がありました。少し意外な人選な気がしましたが、松浦さんはポルシェユーザー(オーナー?)だそう。ポルシェ愛を語るにあたり、「ポルシェに乗るときは、今日の僕は、この車にふさわしい人間だろうかと少し緊張する」と表現されていました。

私はマイカーがない(というか車の運転ができない)のですが、そういう感覚はなんとなくわかります。

私にとってそれは”器”ですねえ。「この素敵な器が欲しいけれど、はたして、これに見合うお料理を作るんだろうか」「買えない値段じゃないけれど、素敵なおもてなしとかしないしなあ」と躊躇してしまう(そしてたいてい買わない)。でもそんな風にモノに価値を支配されること自体が間違っているのかもしれない、などと考えてしましました。

そんな自問自答の答えの糸口が見つかった、素敵な本を今日はご紹介します。

。生活工芸の持つ性質や特徴を「親密なるもの」「素材感覚」などの9つのキーワードで論じています。ほかの作家さんたちとの対談や取材も。

 「生活工芸」ということばをお恥ずかしながらこの本で初めて知りました。食器棚にある茶碗や食器などの雑器のこと。私は「工芸」というと「美術品」に近いイメージを持っていました。

この本にも
「工芸が『生活』から離れてしまった理由には、『美術』のようになりたいと憧れ、『作品』として認められたいという願いが強かったからだと思います」とあり、納得。うんうん。

おしゃれなギャラリーやクラフトフェアなどで何かを買うときって、買う側の審美眼が試されているような、もっと言うと、生きてきた暮らしのセンスのすべてを試されているような……そんな緊張感がありますよね(気負いすぎでしょうか・汗)。

この本の中で、作家の作為が過剰に出た「作品」的な工芸が批判されていたり、オブジェとしての工芸と道具として使う工芸の違いなどが論じられていて興味深かったです。

そんな風に哲学的に考えたことはなかったけれど、「作品」と「使われてはじめて完成するもの」、作っている側の優劣がおかしくなってしまう問題は、工芸に限らず、いろんな仕事の成果物でもありそうです。

中で三谷さんが対談されている作家の作品の写真も掲載。どの作品も、その写真もとてもすてきなので何時間でもながめていられます。
村上躍さんの急須。触ってみたいなあ。

器にふさわしい料理がつくれないとか考えなくてもいいのかもしれない。気に入った陶器をひとつ買って、料理が楽しめたら、だんだん暮らしがふさわしくなっていくのかもしれないですね。


7月21日(土)から 8月19 日(日)まで「生活工芸展」をやられているようです。よろしければぜひ!

ではではまた~。

夏にヒヤッとするおすすめ本をまた別途ご紹介したいと思います。
私が今読んでいる本はInstagramアカウント、Facebookアカウントでもアップしています。