7月7日(土)七夕の日に開催された、ミモレ大学3回目の講義。「自分を知る、社会を知る、未来を知る」をコンセプトに行われてきた講義ですが、今回は「社会を知る」。自分を知った上で、自分の得意なことや、やりたいことをどう社会とリンクさせていくのか。まずはココナッツオイルブームの火付け役して知られる、株式会社ブラウンシュガー1ST代表の荻野みどりさんが登壇しました。


「わが子に食べさせたいかどうか?」
そんな疑問がきっかけとなった、ココナッツオイルとの出合い

荻野みどり 1982年生まれ。福岡県出身。2011年に出産したのをきっかけに、食材を厳選したお菓子ブランド「ブラウンシュガー1ST」を立ち上げる。その後、有機エキストラバージンココナッツオイルの輸入販売を開始し、美容や健康におけるココナッツオイルブームを巻き起こす。2017年からはフードロスをなくすための「#食べ物を棄てない日本計画」をスタート。著書に『』(講談社)、『』(集英社)、『』(小学館)などがある。


ココナッツオイルブームの仕掛け人であり、みるみるうちにオーガニック食材を中心とした会社「ブラウンシュガー1ST」を年商7億円の企業に育て上げた荻野みどりさん。波乱万丈な人生を歩みつつ、自分を見つめ、自分の幸せを選び取っていった経験の持ち主でもあります。

荻野さんがココナッツオイルの存在を知ったのは、東日本大震災がきっかけでした。その時、荻野さんは妊娠8ヶ月。原発事故などで食の安全が問いただされている中、「この子に何を食べさせてあげられるか」ということと向き合うきっかけになったそう。出産後、母乳育児をしていた時に娘に湿疹ができて便秘になった時、原因が自分の食生活にしかないことに気がついて衝撃を受けます。

「この時、お菓子教室を主宰する実家の母の助けを借りて、『わが子に食べさせたいかどうか?』を基準に、安心安全な食材を作ったおやつ作りに取り組むことにしたんです」

さまざまな情報を集めていた荻野さん。そんな中、アメリカではバターのかわりにココナッツオイルを使っている動きがあることを知りました。試しにココナッツオイルを使ったお菓子を作ってみたところ、味も美味しくなっていたことに驚きます。そこで、「全国のお母さんが手軽に買える食材になってほしい」と思い、自ら原産国であるタイやフィリピンに赴き、ココナッツオイルを輸入。自ら販売ルートを開拓していったところ、空前のブームが巻き起こったのです。

 

そんなパワフルな荻野さんですが、「ブラウンシュガー1ST」設立に至るまでは数えきれないくらいの転職を繰り返していました。それに、大学に4回入学しては退学するという経験の持ち主。しかし、そこから得たものは多かったと振り返ります。

「私は4つの大学に入って、全部1年でやめました。これは、『違うと思ったらすぐやめる』と考えているからです。新しいことを始めたばかりの頃は感覚もフレッシュ。その時違和感を感じたら、たぶん違うはずなんです。それに、よく『石の上にも3年』と言いますが、私が思うに、『石の上にも3年いたら退化する』です(笑)。自分がわくわくするなら続けたらいいけど、そうでないならすぐにやめた方がいいです。私は違うと思ったらすぐやめ続けた結果、いま楽しいことにたどり着いているので、安心してやめてください(笑)」


自分を見直し、整理する“役割の棚卸し”
本当に大事な3つ以外はやめてみる


荻野さんの考えに共感する人が増えて会社が大きく成長するにつれ、荻野さんはある壁にぶち当たります。それは、保守的な女性の価値観。福岡で生まれ育ち、男尊女卑的な考え方を当たり前のように押し付けられる状況に反発して家を飛び出したはずなのに、仕事が忙しくなるにつれ、自分もその価値観が刷り込まれていたせいか、「子どもに寂しい思いをさせているのではないか」「子ども第一にするために家庭に入るべきではないか」と葛藤するようになったといいます。

 

「特に女性の場合、結婚してからは妻、母、嫁と、自分の前準備なしに突然役割が増えていきます。仕事もこなして、これらの役割を完璧にこなすのは大変だし、周囲からのプレッシャーも加わります」

そんな荻野さんが取り組んだのは、“役割の棚卸し”。今、自分が背負っているものをすべて書き出し、その役割で求められていることは何か? 自分の心の幸せに繋がる役割なのか? その役割に満足しているか? 自分はわくわくしているのか? と自分に問いただしていったのです。

「恥をかかないように全部の役割をこなすうちに、いっぱいいっぱいになっていました。そこで、書き出すことで現状を整理し、優先順位を付けてみました。本当に大切にしたい役割を3つに絞り、あとはきっぱりやめてみることにしたんです。その過程で、“妻”の優先順位は低いことに気づいて離婚もしちゃったんですけど」

荻野さんが絞り込んだ役割は、「母親」「経営者」「女性」の3つ。やはり子どもを大切にして、幸せにしたいという思いが一番強く、信念を持って取り組んでいる企業経営にも全力を入れたい。ただ、いろんな役割を捨てたとしても、女性としての魅力は持ち続けていたいという結論に至ったのです。

 

「私は器用ではないので、3つくらいの役割で精一杯。みんな、薄皮のようにいろんな役割をまとっていて、気づかないうちに着ぐるみのようにいっぱい着込んでいる人が多いはずだから、役割を整理して、着ぐるみをはいでほしんです」

そして、荻野さんはその見直しの過程でいくつかのポイントを教えてくれました。それは、

「常識から外れ、わくわくするかどうかを基準に考える」
「できない、やっていない理由を考えてみる」

ということ。どうしても現実的なことを考えてしまいがちですが、自分でブレーキをかけてしまっていてはもったいないと考える荻野さん。

「日常の忙しさで忘れてしまっていることもあると思うんです。そんな時は子どもの頃の夢を思い出してみてください。自分の原石がみつかるかもしれません」

役割を3つに絞り込んでシンプルにすることで、自分のやりたいことを明確にする。それを実践し、日々の幸せを実感している荻野さんのアドバイスはとても説得力があり、受講者を前向きな気持ちにさせてくれるものでした。

荻野みどりさんのインタビュー(前編)はこちら>>
荻野みどりさんのインタビュー(後編)はこちら>>

受講者の方から届いた感想PICK UP!

「私自身の中でも、今まで何があっても「石の上にも3年」と思って、教えられてきましたが、すぐ違うと思えば変わっていい!! ということが印象に残りました。やりたいことをする前に、役割の棚おろししたいです」

「『最初に“違う”と思ったら、その思いは当たっている』『安心してやめてください!』という言葉は、一歩踏み出すことに臆病になりがちな自分に勇気を与えてくださいました」

「自分のやりたいことに対する行動力がパワフルで、まわりにいたら巻き込まれてしまいそう。常にポジティブで自分も前向きになれそうです」

取材・文/吉川明子 撮影/朏亜希子(編集部)
構成/川端里恵(編集部)