監督:ルーシー・ウォーカー
出演:オマーラ・ポルトゥオンド、イブライム・フェレール
配給:ギャガ TOHOシネマズ シャンテほかにて公開中
© 2017 Broad Green Pictures LLC


キューバの歌手や音楽家たちを復活させ、ライ・クーダーがプロデュースした『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』がグラミー賞を受賞し、ヴィム・ヴェンダースが監督をつとめたドキュメンタリーは日本でも大ヒット。あの作品をきっかけにキューバの音楽の魅力を知り、興味を持ったという方も多いのではないでしょうか。『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ★アディオス』はグループのその後を映し出すドキュメンタリー。前作が旅情を誘う詩的な作品だったとすれば、今回はメンバーたちの人生をより深く掘り下げる滋味あふれる一本になっています。

 

90歳を超えても艶っぽいコンパイ・セグンド。不運続きだった人生を振り返るイブライム・フェレール、黒人の父親と白人の母親の恋について語るオマーラ・ポルトゥオンド。そして若い頃からディーヴァだったオマーラと、音楽に失望した時期を過ごしたイブライムの友情――。それぞれのパーソナルな物語や音楽的なルーツからはキューバの歴史も浮き彫りになり、このバンドが全世界でブームになったからこそメンバーたちが抱いた“観客たちはキューバの何を知っているのだろう?” という問いも投げかけられます。この映画を観たあとでは、悲しみから生まれた彼らの音楽が、より一層心を揺さぶるものに感じられるのです。

 

「人は誰かの命は奪えるけれど、歌うことは奪えない。歌うことは自然で、歌うのが人間だから。最期のときまで歌っていたい」。そんな言葉を証明するように、“アディオス”する最期の最期まで、音楽と仲間を信じ、愛し続けるメンバーたち。豊かな音楽ドキュメンタリーであり、こんな風に生きられたらどんなに幸せだろうと思わせてくれる、理想の人生を描き出したドキュメンタリーでもあると思います。

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